鏡と私の生活

「わぁニキビできてる」

小鼻に異物ができていた。赤く腫れて、コンシーラーやファンデーションで消すのも難しそうだ。

『昨夜のように夜中にチョコレートケーキを食べると肌環境に悪影響を与えます。ニキビ、吹き出物はもちろん肥満や糖尿病にもなりやすいため、それらに嫌悪感を抱かれるのであればお控えいただくことをお薦めいたします』
「……はい」

鏡の前でつぶやくと何倍も返ってくることを失念していた。

「昨日は特別だもん。別に毎日してないからいいじゃん」

はぁ〜とため息を吐くと、鏡からまた声が聞こえる。

『一日くらい、一度くらいの積み重ねが大きな差を生むことがあります。例えば』
「はい、すみませんでした！気をつけます！でいいんでしょ」
『良し悪しはご主人様自身でお決めください。しがないAIが決めるものではございません』
「じゃあ夜中のケーキはいい！美味しいから」
『かしこまりました』

この日からケーキを食べていると鏡はカロリー量と消費するための運動量をコメントしてくるようになった。