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カンッと軽い音が鳴った。指輪が鏡面にあたったのだ。
「見て!」
『某ブランドの指輪ですね。ペアリングとして人気の商品です』
「そうなの!彼がくれて……」
『プロポーズの道具としても活用されています』
「その通り、私はプロポーズされました」
キラキラと輝く宝石が鏡に映した。貰った時は嬉しさと動揺で細部まで見えていなかったが、持ち帰るとゆっくりと観察できる。波打つようなデザインが美しい。
「どう、似合う?」
『お綺麗です』
「え」
初めての明らかな褒め言葉に私は口を抑えた。どれほどメイクを変えようとファッションに気を遣おうとも褒めて貰っていなかった。指輪効果だろうか。さらに私の心は舞い上がった。
「ありがとう」
『大変魅力的です、指輪が』
「ちょっと」
指輪効果じゃなかった、指輪が褒められただけだった。いつも通りの返答に唇を立てた。
「今日くらい優しくしてくれてもいいじゃん」
『私はいつでもご主人様の味方です』
「どうも」
指輪が当たった拍子に、手も触れてしまったようだ。汚れが気になって、そばに置いているクリーナーで拭き取った。
「うん、綺麗」
『ありがとうございます』
私が先に褒めてしまった。
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