プロローグ

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プロローグ

 卒業旅行でヨーロッパ観光を選択したのは正しかった。  バイトで貯めた旅行資金を全て叩いて決めたスペイン旅行は、歴史的建造物や、風光明媚な街並みも最後に観れた。 『最後・・・か』  私にだけ見える今の景色。  それは、カラフルな衣服を着、様々な髪型をした多国籍人種と一緒に、搭乗カウンターに並ぶ人々。  私の前には大学の同級生達もいる。  みんな含めて、そのカラフルな色彩の背後に、真っ赤な赤が見える。  搭乗アナウンスでは間違いなく、ここに並んでいる人達みな、同じ便の飛行機に乗る。 「何だか、物々しい雰囲気だね」  友人の言葉に、彼女が向ける視線の先に目を向ける。 『確かに?』  手荷物カウンターでの、念入りなチェックは、搭乗時間前とは言え、間に合うのかと思うほど時間を掛けている。
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