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門出
時はすぎ、あれから十年が経った。
「行っちゃうのね……」
母親は大きくなった彼女を見て涙ぐむ。
「年に一、二回くらいは顔を出すよ」
彼女は大荷物を引っ越し業者に頼み、自身はトランクを片手に持っていた。
玄関先、門の向こう側には、もう引っ越し業者のトラックはいなくなり、かわりに、黒い軽自動車が停まっていた。
「そうね、ずいぶん遠くの街へ行っちゃうからねぇ……」
よし、と呟くと、彼女は歩を進める。
一度振り返り、か細い声で「いってきます……」と呟いた。
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