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今タンスの上にいる。
あくびをした。小さく目を開けてまた寝た。
静かな水曜日の午前中。私は家族を会社や学校に向かわせ家事を済ませ、お気に入りのハーブティーを飲みながらリビングのソファーで本を読んでいる。
私の大切な時間だ。
私は専業主婦だ。結婚する前は世界を飛び回る生活をしていた。私はキャリアを重ねて行こうと思ったが、家庭との両立は思いの外たいへんで身体を壊して入院した。入院した私の付き添いをしていた夫の一言が私を専業主婦になる決意をさせた。
「君は僕と一緒にいれば良いんだよ。頑張る君も頑張らない君も僕は好きだよ。なのに君という人はいつもひとりで頑張っている。僕はいつも頑張る君を見ているしかできなくなってしまう。たよりない僕だけど、僕に甘えてほしい。」
あの頃の彼はカッコ良かった。身長も高くてフワフワとした髪型をしていて筋肉質だった。
今の彼は髪も薄くなりお腹もぽっこりしていてかわいくなってしまったけど。
そんな彼と私は、やがてかわいいベビーを授かりそのベビーも、もう高校生と中学生だ。やっと余裕ができた私は更年期障害に悩まされ心のバランスが悪くなった。毎日が灰色で、ベッドから起きられない日々を過ごしていた。
ある日主人が、ダンボールを抱えて帰ってきた。
ダンボールにはみかんと書かれていた。夏にみかんなんて、珍しいと思った。
「開けてみて。」
主人はダンボールをリビングの端に置き、着替えをすませ、家族を呼んだ。ダンボールは机の上に置かれた。私も子どもたちもみかん箱の中身を楽しみにしていた。
主人が箱を開けると、中からモゾモゾと動く毛玉が現れた。みかんだと思っていた私は、びっくりして固まってしまった。
「何?」
みんなはもう一度箱の中身を覗き込んだ。
「にゃー。」
かわいい鳴き声が聞こえてきた。
箱の中身はオレンジ色の仔猫だった。
どうも主人の仕事関係の知人のうちで里親を募集していたらしく、主人はその猫を譲り受けたらしい。
子どもたちは大喜びだった。ペットを飼いたいとずっと言っていたからだ。私は、困りつつもかわいらしい仔猫に癒やされている自分に気づいた。
翌日からはたいへんだった。ねこを飼うための用意をした。しかし猫はかわいい。何だか子どもが赤ちゃんの時を思い出した。手はかかってたいへんで、ひとりで泣いたこともたくさんあった。でも私は乗り越えてきたのだ。
なんでこんな事思い出したのかしら。
仔猫が来てからもう3年たった。更年期障害もだいぶ良くなってきた。猫は私に生き甲斐を作ってくれた。だから私はきっと元気になれたのだろう。
今私の横に移動してきたみかん。みかん箱から現れたかわいい相棒。
私は彼女の背中を撫でた。気持ち良いのかまたあくびをした。
これからもよろしくね。かわいいみかんちゃん。
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