第1章

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魂の抜けた様子でカンタの事後処理を受けた安曇は、相手がシャワーに立ったのを見計らうと覚醒しベッドから這い出た。 音を立てず、手慣れた様子で他人の携帯を操作する。先ずは本名を確認。ターゲットで間違いない。必要なデータをクラウド上の然るべきフォルダに飛ばし、現状復帰。指紋を残さないようにするのは鉄則だが、物々しい手袋などは使用しない。ホテルの備品を巧みに使い、証拠隠滅の手間を省く。極力消エネ、短時間で任務を済ませるのがモットーだ。 何も知らないカンタとは、連絡先を交換したりはしなかった。ネコに乗られるのが好きなタイプだったけどけっこう良かったと、安曇は新鮮な記憶を反芻する。自分でも知らなかった一面を発揮してしまった。あのクラブでまた会うことがあるのならば、次は任務外でお願いしたいものだ。
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