第1章

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カンタと別れ、ネオン街を早歩きで抜ける。いかがわしさを感じさせない明るさが戻ってきたころ、安曇は端末を取り出した。 抜き取ったクラウド上のデータをサラッと流し見る。安曇の任務は情報窃盗までなので、本当はその必要はない。ただ、何故、何のために自分は任務に就いているのか、少しでも知りたい気持ちがあった。 ……なるほど。売人か。舌と指先で身体はくまなく調べたし、カンタが行為にそれを持ち込むこともなかったから、常習者というわけではなさそうだった。金って怖いな。純粋に売買の為だけに危ない橋を渡る奴もいるものだ。 今夜はノリノリで任務に臨めたし、ターゲットもそんな様子だったから、アレの出番はなかった。もし使わなければならない状況になっていたとしたら、売人ならば、異変に気付くかもしれない。先に任務遂行して知っておくべきだったな。反省点は、次回に活かそう。 「……M、C……っと」 アルファベット2文字を入力し、適当な街の写真とともにSNSのストーリーズに投稿した。安曇をフォローしている上司が見たら、まもなく消えるだろう。 ミッション・コンプリート、任務完了だ。
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