第2章

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もっとも、今夜の客は安曇 朔と松咲 ユキだけだったので、そんなものが見つかるはずはない。ただ、用心するに越したことはない。味方すらも疑ってかかるのは、この仕事の基本中の基本だ。 東京で、安曇とユキはもっぱら、任務という名の軽微な諜報活動をしている。本人たちは知らないが、2人とも宇都宮の部下だ。その優秀さに関しては、彼らも自覚があるようなので、上司としてわざわざ褒めてやる必要もない。もちろん報酬は振り込まれているはずだが、達成感という名の見返りもオマケとして付いてくる。 宇都宮の部下は、この2人だけではない。東京には安曇とユキの他にあと2人いて、他府県で任務に就いている者が6人。合計で10人だ。宇都宮も合わせた11人が、チームとして国家組織に登録されている。 21世紀も半ばに差し掛かった。正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求する日本国民は、未だに戦争放棄のスタイルを貫き、国家権力による武力行使を否定し続けている。だが、国際社会はそれに同調してはくれない。有事に備えるための一策として、省庁の中央集中は解消されつつあった。 省庁が地方に分散することによって生じるデメリットの一つは、国家安全業務の分断だ。それを回避するための一機関として編成された、内閣総理大臣付特命部隊、通称『TEAM 11(チーム イレブン)』。各省庁から1人ずつ選ばれた若手のチームメンバーは、本当の目的を知らされないままトレーニングとしての任務に就いている。
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