第2章

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金曜の夜の閉店作業は、いささか慌ただしい。この国でいちばん眠らない街と言われるこの場所は、一晩中気を抜けない。帰宅してから、東京での仕事をまとめて組織に送り、昼までに次の勤務地に移動しなければ。宇都宮は、睡眠時間を必要とする質なので、移動時間も睡眠に充てる算段でタイムスケジュールを立てている。 「……早いな」 端末に通知が来た。安曇かユキか。ユキには4件任せてしまったので、さすがに一晩では無理だろう。安曇か。ターゲットの見た目を宇都宮は知っているのだが、なかなかの容姿だった。安曇の好みかどうかはわからないが、モチベーション高めで取り組んでくれたことだろう。 「MC……うん、OK」 任務完了の報告を受けると、宇都宮は端末を指でスクロール操作し、安曇の得たデータにさっと目を通した。頭の中で報告書を広げる。こうしておくと、帰宅後の資料作成が早いのだ。 安曇もユキも、仕事が早い。そのやり方もスマートな上に丁寧で、任せておいて不安はない。尚且つ2人は任務遂行の手段が似ているので、宇都宮は部下の中で真っ先に2人を対面させた。ターゲットのリストも共有させ、お互い情報を交換することで、益々有能な部下に成長してくれていると感じる。
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