第2章

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しかし、やはり黒だったか。安曇のターゲットは、違法薬物の売人である疑いが濃厚だった。本人が中毒者でないことを宇都宮は知っていたので、特に注意喚起することはしなかったのだが……。宇都宮は眉を寄せる。安曇の任務遂行の手段がいつも通りだったとしたら、危険な目に遭いはしなかったか。 安曇が研究活動の傍らで、怪しげな薬を生成し、任務に使用していることは、宇都宮もその上部組織も知っている。安曇がユキにも錠剤を渡しているのは、リスト共有のたびに見かけるのだが、これまで2人が危険に晒されたことは無かった。 もうじき上がってくるだろう安曇の報告書次第では、ちょっと指導を入れた方が良いかもしれない。宇都宮は、左手の人差し指で眉間を擦りながらそう考えていた。 怪しい機器は、今夜も発見されなかった。自分のためのドリンクを、宇都宮はグイッと飲み干す。この5件は3日もすれば問題なく完了報告が来るだろう。あと2人の部下に指示を出してから、ここを出よう。東京では、夜間活動する部下には正体を明かさず顔見せしているのだが、昼間の任務に就く部下とは通話でしか繋がっていない。
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