第3章

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「仕方ない。苑子も連れて行くけど、松咲さんフォローしてよ?ね?お願い」 「……秘書同伴可能か、確認いたします」 たしかに、仕方ない。華やかな峰川夫人は、同伴すると見映えがするのだが、こういった社交の場では戦力外だ。アパレルブランドの、ニューラインのお披露目という名目のレセプションパーティー。専務が夫人同伴で出席するならば、事前にいろいろと情報を叩き込んでおかねばと思っていた。でも、自分がその場に居るのならフォローができる。その方が楽だと割り切ろう。 見目の良い女性として生まれたからには、こういう生き方もあったのだろうな、と苑子夫人を見ながらユキは思う。夫に従属し、添え物の花として、享楽的に生活する。ただ、そういった類の夫は、往々にしてできるタイプの女を好まない。自分よりランクが上の女を前にすると、性欲がフル稼働しなくなるのではないか。峰川専務は複数の愛人を抱える好色な男だが、実際のところ、ユキが色気のある視線を送られたことは皆無だった。
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