第1章

7/11

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/99ページ
「お」 思わず小さく声に出てしまう。入口付近、今夜いちばんのイケメンが、安曇の視界に入ったからだ。ウェーブのかかった黒髪、お洒落に整えられたあご髭、身体つきは脱がせなくてもわかる細マッチョ。いいな。ターゲットじゃなかったとしても、今夜の標的だ。 よく見れば、周りに派手そうな女を2〜3人連れている。「いちばん下」が安曇の担当だ。この男がノンケだとしたら、ターゲットではないのかも。ま、やってみるか。何事もトライアンドエラーだ。男の視界に入るポジションに移動し、安曇は視線を送った。 「……ひとり?」 「そう」 ビンゴ。ものの5秒で釣れた。対象がこちらに向かってくる間に全身を一瞥する。171センチの安曇よりかなり背は高い。185センチ。うん、あるな。この男がノンケじゃないのならば、任務の対象である可能性も高い。 「さっきの女の子たちはいいの?」 男の腕に手をかけ、はるか上方にある顔を見上げた安曇は、甘えるみたいな声を出した。弾力のある上肢。思ったとおりの細マッチョだ。早く脱がせてみたい。 「……それどころじゃなくなっちゃったよ」 男の垂れ目が細められて、糸みたいになった。耳元で期待通りの言葉が囁かれる。 「出よう?」 よし、ある意味今夜も任務完了だ。肩を抱かれながら、安曇はほくそ笑んだ。
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加