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望まない魅了って枠
ひ~、ヤバいわ!!
お姉さまなんて呼ばないし! 呼んでないし! そこまで親しくない!!
ピロリンと鳴り好感度のハートマークが出て、七十パーセントと表示が侍女長の頭上に出た。
「あの、侍女長……、他の方と同じように扱ってください。
この様な事をされますと、私がもっと皆からつまはじきにされてしまいます。
ですから、お願いです」
そんな事をしてる人をクビにするだの益々余計な方向へ行きかけたので、最終爆弾を投下した。
「お願い、お・ね・え・さ・ま」
「ぐぅ!! わかりました! 私が間違っていました。
あなたの成長を見守るのも私の愛だと理解してくれるわね?」
鬼気迫る侍女長に気圧されながら、コクコクと頷いた。
この魔具、バグってる! 絶対バグってる!!
ここでゲームがバグってると思いつかないのが杏璃だった。
「急いで公爵を攻略しないと、この先どうにもならないわ!!」
何度となく攻略の為に往復した王城の隠し通路をひた走り、公爵が子供の頃使用していた部屋の出口へとたどり着くと、中を伺いながらそっと開けてみた。
するとその動きを察知したモンブラン公爵がベッドから起き上がり、侵入して来た杏璃の腕を掴んで拒んだ。
「やめろ! 貴様は牢獄へ送ったはずだ!」
魔具で魅了されたなら、こんな風になるはずが無かった。
「んもう、何でよ、年でこの魔具効かないのよ!!」
掴まれてる手から逃れようと必死に抵抗してる時、ブレスレットがその手首から滑り落ちたが、杏璃としては効かない魔具を持っていても意味が無いと思い、取り返そうとはしなかった。
寧ろ、亡くなったことで侍女長が正気に戻ってくれる事を願うばかりだった。
「誰か! 衛兵!」
部屋の扉前に控えていた衛兵が雪崩込み、またしても杏璃は捕らえられ今度こそ、牢獄へと連れていかれた。
「ちょっと! 痛い! 逃げないから! 緩めてよ!」
「……」
ジロリと甲冑の中からひと睨みされ、その後、急に衛兵は態度を変えた。
ピロリン、と鳴り好感度のハートマークが出て、五十パーセントと表示が衛兵の頭上に見えた。
「は? え?」
「なんでこんな事ばかり……、お前は心配している者の身になれ。
侍女長殿はあんなに献身的に」
「ちょっと待って!! どうしてアンタがそんな事!」
「こうやってトラブルを起こすのも、侍女長に構って欲しいんだろ?
俺だってお前を構って鎗田氏、守ってやりたい、だが公爵や王族を護るのが俺の仕事なんだ。
だから今夜だけは牢獄で一晩反省してくれ」
そこでちょっとだけ正気になった衛兵が、牢獄へと連れて行き一晩の反省を促された。
「いやー!! こんな所嫌よ!!」
「すまん! こうしないと公爵から切り捨てられてもおかしくない状況なんだ!
分かってくれ!」
心底苦しいと嘆きながら、衛兵は牢獄の地下を後にした。
魔具が効かないと思い込んでいた杏璃だが、本来のヒロインとしてのチートである魅了が違う所で発揮されていると、未だに気づけないでいた。
「とにかく、移動魔具で逃げなきゃ、こんな汚い所に居られないわ」
もう少し夜明け前くらいなら、反省して出たって思われるだろうと、なぜか自信満々な計画を立てその通りに異動魔具をしようした。
鍵が施錠されてる所から出たら、脱獄だとは頭にも無い杏璃だった。
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