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弱きもの
私はタブレットを閉じるとすぐにスマホを取り出し、まさみさんに電話した。
「ゆきこさん、どうかしましたか」
まさみさんの声を聞いて、なんだか私は気が緩んでしまい次の言葉が出なかった。
「どうかしたの?」
「あ、あの、実はですね‥‥‥」
やっとの思いで私はまさみさんにこれまでの経緯を話した。事務的で淡々と話すまさみさんではあるが、そこにはAIとは違う、何というか安心感があった。
「そう言えば、電話でも死んでいるではなくて倒れているって言ってたわね」
そう言ってため息をつきながらまさみさんは続けた。
「分からないことがあったらチャントなんかに質問したらいいのに」
「しましたよ!」
まさみさんはああ見えて、以前から弱きものには手を差し伸べてくれる芯の優しい人だ。だから、今回の事も何とかしてくれるはずと、そう思っていた。
「でも、チャントなんとかの言っていることは正論よ」
私は膝から崩れ落ちそうになるのを、涙が零れそうになるのを必死にこらえた。まさみさんの口からそんな言葉を聞かされるなんて思ってもいなかったからだ。
スマホを持つ手が震え、声を発することも出来ないでいると、少しの沈黙の後、まさみさんは私に告げた。
「分かりました。ゆきこさんはそこで待機していて下さい」
それだけ言うと電話は切られてしまった。私が話せる状態ではないと察知しての事だ。
経験上、過去の流れではまさみさんが直接現地に来て、そしていつも問題を解決してくれた。だから今回もまさみさんが駆けつけてくれるものだと思っていた。
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