弱きもの

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「あの‥‥‥」  私が不安げにその様子を伺っていると、女性の方が声を掛けてくれた。 「心配いりませんよ。あの人はうちの獣医ですので、扱いには慣れています。あ、申し遅れましたが」  そう言ってその人は名刺を渡してくれた。  臨職である私は名刺を持っていない事を告げると、その女性は頷き、微笑みながら私と老婆たちを見回した。 「後は私共に任せて下さい」 「回復したらまた野に放つんか」  そんな場違いな言葉を言い放ったのは、あの電話をしてきた老婆だ。それでもその女性は笑顔を絶やすことなく穏やかに答えた。 「心配ございません。元気になったら里親が見つかるまで、私共が責任をもって面倒見させて頂きます。一刻を争いますので、これで失礼します」  そう言って車に向かうと、未だ車内で出来る限りの処置を施している男性に二言三言声を掛けてから、車を出発させた。 「これでせいせいし‥‥‥あ、いや一安心だわ。ねえ皆さん」  二人の老婆は電話の老婆の言葉を無視して各部屋へと引っ込んでしまった。  この後の市住の方々の空気を心配になりながらも、私もその場を後にした。
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