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人の情
そのまま墓地へと向かっても良かったのだが、私は一旦市役所に戻る事にした。取りあえずの事の顛末と、そして‥‥‥
生活環境課に戻ると、そこにはまさみさんと課長しかいなかった。みんな出払っているようだ。
「お疲れ様。大変だったわね」
まさみさんのデスクの前に立つと、まさみさんは一度戻った私を咎めることなくねぎらいの言葉を投げてくれた。まるでその意図を見透かしているかのように。
「NPOの方を呼んで下さったのなら、一言そう言ってくれれば良かったのに」
「そうね。言葉足らずだったわ。ごめんなさいね、ゆきこさん」
言葉足らずはいつもの事だし、こう素直に謝られては次の言葉が出ない。
私はゆきこさんに一礼だけすると、そのまま課長のデスクへと体を向けた。
「課長!」
悠長にパソコンを眺めている課長に苛立ちを憶え、私は少しきつめの口調で課長に言葉を投げた。突然声を掛けられたことで、課長は目を丸くさせている。
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