朝礼

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 普段は朝礼中でも机に向かって書類に手を伸ばしながらの、言わゆる『ながら朝礼』をしている松葉さんも今日ばかりはしっかりその視線を課長に向けている。松葉さんは普段から寡黙で、絵にかいたような仕事人間なのだが、所内唯一の二十代であろうこともあって、中々雰囲気に馴染めていないのだろうと私は思っている。  皆を一通り瞥見し、自身が注目されていることに満足げな笑みを浮かべた後、課長はそれでもいつものように落ち着いた口調で話し始めた。 「えー、昨今はいたる所で近代化が進んでいます。とはいえ役所というものは市民の税金で運営されているということもあり、中々そちらに費用を回すということに躊躇してまいりました」 「課長、前置きはいいから早く本題に入ってくれよ」  そんな軽口を叩いたのは、定年間近であろう宮島さんだ。間違いなくここでは最年長な宮島さんは、課長に対してもため口である。  あ、因みに私は一人を除き、課内の人達に年齢を聞いたことも聞かれたこともないので、年齢は全て推測だ。
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