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『その猫はその場に放置して、すぐに市役所に戻って下さい』
その言葉に、流石に私も感情的になってしまう。
「でも、まだ生きているんですよ」
『生きている動物の保護は市役所の業務ではありません。すぐに市役所に戻って下さい』
そこまでのやり取りを黙って聞いていた老婆たちが一斉に声を上げた。
「この子は今にも死にそうなんよ。後生やから助けてやってくれんかね」
「そうや、市住でもペットを飼っていい事にしいひんか。したら私が飼うきに」
勝手なことを言っているけれど、気持ちは痛いほど分かる。私だって今が業務外の時間であったらと思い胸が痛い。
私が穏やかにその場をなだめようとすると、電話を掛けてきたという老婆が急に大声を張り上げた。
「なんねんこいつは!目の前に助かるかもしれん命があるというに、そんなこと言うて、情ってもんはないんか。御託はええから、はよう引き取ってや」
あるわけがない。AIなんだから。というか、この老婆は当初からこの子に対しての情が感じられない。この人に関して言えば、本当は迷惑しているのではないか?とも感じられた。
でも私は違う。
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