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掃除
蝉がうるさく鳴いている八月の半ば。
俺・スグルは、お盆帰省のため、実家に帰ってきていた。
暇だ、暇すぎる。田舎過ぎてなにもすることがない。
俺は見慣れた居間の高い天井を見上げて、うるさい蝉の声と、今にも壊れてしまいそうな扇風機の音だけを聞いていた。
すると、耳元で畳がミシミシとなり、何かが近付いてくる。
「スグル! 暇してるなら、おじいちゃんの部屋の整理しなさい!」
母さんが、寝転んでいる俺の頭をうちわでパシッと叩く。
俺は眉間にシワを寄せ、明らかに嫌そうな顔をして見せる。
「じいちゃんの部屋汚いじゃん」
「だから片付けてって言ってるんでしょ! エアコンつけてもいいし、ほしいのあったら持ってっていいから」
母さんは、それだけ言うと台所へと向かう。
「あたしは夕飯の準備するから、よろしくねー」
半ば強制的に頼まれた。
暇なことに違いはなく、俺は反動をつけて起き上がる。
すると、前方の仏壇の遺影と目があった。じいちゃんである。
「わかったよー……」
俺は、母さんとじいちゃん、両方に向かってそう答え、部屋へと向かった。
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