掃除

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 今年の春先に亡くなった祖父の部屋も、ほぼそのままの状態で残されていた。と、いうことで、遺品整理というものも、ほぼできていないということだ。  積み上げられた雑誌や、この部屋だけ快適にされているので、エアコンや動く介護用ベッド、大画面テレビなどもまだ使えそうな状態だ。  もしかしたら、お小遣い程度にへそくりなんかはないだろうか、さすがに電化製品を売りさばくのは気が引ける。  ゴミのようなものだけは捨てられているようなので、足の踏み場はあるくらいには、整理されていた。  どこから手をつけようか、と、机の上の散らばった所から始める。 「引き出しの中からお金とかはー?」  淡い期待をしながら、引き出しを開けていと。 「お、これは!」  俺は黒い小さな円盤をみつけた。これは、どこからどうみても、呼び掛けたら反応する、AI音声認識サービスの機械である。  自分のスマートフォンを取り出し、ブルートゥースで繋がるか試してみる。  電源も入る、繋がる。 「使える! ラッキー!」  俺は機械を手に取り、お持ち帰り決定!、と独り言を言いながら、ルンルン気分で掃除を続けた。  アブラゼミの鳴き声から、ヒグラシの鳴き声に変わるくらいまで、俺は真剣に掃除をするのであった。
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