起動

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起動

 田舎の帰省生活も一週間もせずに終わり、俺は一人暮らしのアパートへと帰った。  ワンルームなので、この機械はどこからでも声を聞き取って反応してくれるだろう。  俺はAI音声認識サービスの黒い機械をテレビ台の脇に置く。  じいちゃんの使っていたこの機械は、結構昔のものでサービス終了していないのが奇跡なくらいふるいものだ。  そのせいか、起動の際には掛け声が必要なのだが、少し恥ずかしい掛け声であり、俺はコホンと咳払いをした。 「申すモース、今の時間は?」  このAIの名前はモース、掛け声が申す。おやじギャグかと突っ込みたくなる。  モースの上部がボワッと黄色く光る。 【只今の時刻は、午後、八時、です】  俺は、ガッツポーズをする。やった! 動いた!、と。 「申すモース、アラームを毎日、午前七時に設定して」  再びモースの上部がボワッと黄色く光る。 【アラーム設定が多数されています、午前七時にも、設定しますか?】  あれ?、と、俺は不思議に思った。  繋いだのは俺のスマートフォンであって、じいちゃんのデータとは繋がってないはずなのに、と。 「アラームの設定を全部リセットして、毎日午前七時だけにして」  モースはしばらく上部を黄色く点滅させたが、処理が完了したのか、喋る。 【かしこまりました、毎日、午前、七時、に、アラームを設定しました】
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