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解明
じいちゃんは、亡くなる四月までボケ防止のためか、毎日日記をつけていた。
よくよく考えてみれば、じいちゃんはまだ七十代で亡くなるには早く、死因は裏山から滑り落ちて転落死であった。
俺はモースから流れ出る日記の内容に、二重の意味で怖くなった。
【二月十四日、今日はバレンタインデー。あの人と会うことになっていた。会うには会ったが、チョコレートは貰えず。少し残念だが、会ってくれたお礼にお小遣いをあげた】
【三月十四日、今日はホワイトデー。あの人と会い、ブランドのバックと時計をプレゼントした。あの人は、どうせなら保険金の受取人にしてと言ってきた】
【三月三十一日、明日であの人と会うことを断ち切ろうと思う。新年度だし、俺もいい大人だし、そろそろ葬式のための貯蓄もしなくちゃいけないので、あの人にはお金をかけられない】
【四月一日、あの人に会うと、エイプリルフールだから嘘ついてるんでしょ、と言われた。そういう意味ではなかったのだが、きちんと伝わっただろうか】
【四月十日、あの人からまた会いたいと連絡が入っていた。お金は渡せないし保険金の受取人にはできない旨を伝えておいた。また会ってしまう俺も俺だなぁ】
日記は、ここで終わっていた。
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