遺す

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 眠らない街、とよく表現される繁華街。その名の通り、電気が光り輝いていた。  ラブホテルの前で、露出度が高い女が一人、俺を見て手を振ってかけてくる。 「あ、あなたがスグル君? 初めまして、ハナゾノです!」  俺は、無言でじいちゃんの写真を見せる。  ハナゾノは、笑顔のまま、微かに眉を動かした。 「この人、知ってますよね?」 「だーれ? そのおじいちゃん、私は知らないよ?」 「このおじいちゃんはね、日記を遺してたんですよ、その日記に……」  俺がまだ喋っているにも関わらず、ハナゾノは俺の手首を握り、ラブホテルへと引きづりこむ。 「おい! まだ……」 「長い話しになるでしょ? とりあえず中に入りましょ」  ぼそっと、ドスのきいた声でハナゾノは言った。さっきまでの猫なで声はなんだったのか、という程の豹変ぶりである。 「ってことは、お前やっぱり!」  俺の言葉をハナゾノは遮った。  フロント前のソファーに押し倒し、俺の腕に何かを刺したのだ。  刺された、刃物か? と、思ったが、ただ頭がぼーっとし始め、みるみるうちに足腰が立たなくなる。 「私のだったのに。仕方ないわね」  その女の言葉を最後に、俺は意識が遠退き始めた。  最後の感覚は、甘い匂いで彼女におんぶされてどこか、たぶん、ラブホテルの一室につれていかれるところだった。
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