掃除

1/2
前へ
/9ページ
次へ

掃除

 蝉がうるさく鳴いている八月の半ば。  俺・スグルは、お盆帰省のため、実家に帰ってきていた。  暇だ、暇すぎる。田舎過ぎてなにもすることがない。  俺は見慣れた居間の高い天井を見上げて、うるさい蝉の声と、今にも壊れてしまいそうな扇風機の音だけを聞いていた。  すると、耳元で畳がミシミシとなり、何かが近付いてくる。 「スグル! 暇してるなら、おじいちゃんの部屋の整理しなさい!」  母さんが、寝転んでいる俺の頭をうちわでパシッと叩く。  俺は眉間にシワを寄せ、明らかに嫌そうな顔をして見せる。 「じいちゃんの部屋汚いじゃん」 「だから片付けてって言ってるんでしょ! エアコンつけてもいいし、ほしいのあったら持ってっていいから」  母さんは、それだけ言うと台所へと向かう。 「あたしは夕飯の準備するから、よろしくねー」  半ば強制的に頼まれた。  暇なことに違いはなく、俺は反動をつけて起き上がる。  すると、前方の仏壇の遺影と目があった。じいちゃんである。 「わかったよー……」  俺は、母さんとじいちゃん、両方に向かってそう答え、部屋へと向かった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加