誤算

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誤算

 スーパーへの道程(みちのり)のそこここに立ち並ぶのは桜の木。  満開だった花が散り、新緑が目にも(まぶ)しい折。  木の周りには、毎年恒例の毛虫のフンが散乱していた。  桜の木というのは毎年毎年、本当によく毛虫をつける木だ、と思う。  桜の新芽は相当旨いと言うことか?  何にせよ、もうそんな時期になったんだな。  見慣れた景色の中を、そんなことを思いながら何の気なしに歩く。  対して私の横へ並んで一緒に歩いているロマンスには、全てのものが珍しくて仕方がないらしかった。  歩きながら始終キョロキョロと辺りを見回す姿は、おのぼりさんよろしくどこかそわそわした様子だ。  と、それまでは周囲を興味深げに観察しているだけだったロマンスが、急に立ち止まった。 〝どうしたんだ?〟  そんなニュアンスを込めて投げかけた私の視線に、ロマンスが瞳を輝かせる。 「ドクター、僕、足元に桜餅が落ちていると思います!!」 「……は???」  ロマンスの言っていることの真意が掴めずに間の抜けた声を出してしまった直後、ある1つのことが脳裏を(かす)めた。 (いや、だが――。いくら彼だってそんなことは……)  (かす)めた直後に頭を軽く振ってその考えを抹殺。  それなのに――。
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