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「でも、嫌いじゃない。正直、ちょっと複雑だけど……。壊れない限りはずっといられるんだもんね?」
「そうだな。壊れたらちゃんとお父さんが直すし」
お父さんはいつものように頭をなでる。
「愛!」
突然、私の名前を呼ぶ声が耳に届く。
私は声の聞こえた方へ顔を向けると、お母さんが走って来ていた。
「零士さん」
「美緒」
「零士さん、ありがとう。やっぱりここにいたのね」
お母さんは私の座るベンチの前に来ると、しゃがんで目線を合わせてくる。
「ごめんね、愛」
「ううん。お父さんから話聞いたよ。私こそごめんなさい」
「愛……」
お母さんは立ち上がりギュッと私を抱きしめる。
「お母さん?」
「私は愛が大好きよ。こんな姿になっても。大切なことに変わりはないの。移動した記憶のお陰ね」
お父さんは私達の様子を見て、職場に戻って行った。
「お母さん」
お母さんは空いたベンチに腰をかける。
「何?」
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