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ジューンブライドは五日間。花嫁には記録係が付き、セックスの回数を他の十七人の花嫁と競い合う。勝てば天国、負ければ地獄の狂気の宴だ。
花嫁の発表を受け、新聞部は早速、出場者をまとめた学校新聞の作成に取り掛かった。矢田裕翔の担当は三年の新堂俊平だ。彼の写真を入手せよと部長に指示され、柔道場の更衣室に隠しカメラを設置した。
「よし、確認しよう」
他の部員はインタビューや情報収集に出払っていて、部室には部長しかいなかった。二人で動画を確認する。
新堂のロッカー、その周辺、計十二ヶ所の映像だ。矢田の父親は不動産屋の社長なので金には困らない。ただこの学園では「成金」の部類で、ピラミッドの底辺だ。
矢田は媚びへつらうことに抵抗がないのでいじめられたことはない。凡庸な見た目のおかげもある。いじめられるのは極端に不細工か美形のどちらかだ。今日発表された十八人の花嫁も綺麗に二分されていた。
画面に映ったのは新堂ではなく、新入生の二人組だ。何度か前庭で見たことがある。
「この二人、よく選ばれませんでしたね。態度悪いって聞きますよ」
矢田が言うと、部長は呆れたように、「きみ、知らないのか」と言った。
「この坊主は唐和会……ヤクザの息子だ。こっちの美形はその付き人。ヤクザの構成員なんか怖くて手出しできん」
「唐和会……マジすか」
画面の中で、美形がシャツを脱いだ。思わず見入る。着痩せするタイプなのか、意外と頑丈そうな体つきだ。でも隣の男がデカすぎて、並ぶと華奢に見えた。
二人がしゃがみ、画面から消えた。
「えっ」
他のカメラ映像に二人の姿はあった。坊主の膝の上、美形が向かい合うように座っている。
「矢田くん! どういうことだね!」
「し、知りませんよ、俺だって……」
言いながら画面を拡大した。美形の乳首を、坊主がちうちうと吸っている。どういうことだ、これは。二人はそういう関係なのか?
でも美形はラブドールのように無表情だ。我慢しているのだろうか、不感症なのだろうか。根比に見えてきた。
「こっち、自分でいじってんじゃねぇだろうな」
地を這うような低い声で、坊主が反対の乳首をトンと突いた。
「そのようなことは、していません」
彼の声を初めて聞いた。見た目通りの、抑揚のない声だった。なのに色気を感じ、ひどく惹かれた。
「勝手なことするんじゃねぇぞ。お前の体は俺が作り替えたんだ。手ぇ加えるようなことしたら許さねぇからな」
ドキリとした。どう、作り替えたんだろう。坊主はまた乳首に吸い付いた。さっきから左しか吸っていない。彼の乳首はちょうど見えない。坊主が乳首から離れ、「へへ」と下卑た笑みを浮かべて言う。
「情けねぇ乳首だなぁ。母乳も出ないくせにこんなにデカくして恥ずかしくないのか、ええ?」
侮辱しながら、坊主は乳首をギュッと摘んだ。美形の表情が崩れ、矢田はたまらなく興奮した。
彼の、作り替えられた体を見たい。もっと声を聞きたい。泣き崩れる姿を見たい。欲求が股間を熱くした。彼の乳首を弄ぶ坊主頭が、不愉快で仕方がなかった。
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