ジューンブライド

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   蒸し暑い倉庫に連れ込まれ、乳首を求められた。いつもの要領で八角の膝の上にまたがり、シャツを羽織ったまま、好きなようにいじらせる。  いつもと違うのは、まだ貫通して日が浅い君蔵のアナルに、八角の人並外れたサイズのペニスがずっぷりと埋め込まれていることだ。 「ふっ……んあっ」  八角は動かない。君蔵の身体を腕ごと抱き抱え、執拗に左乳首ばかりを愛撫する。異物感と疼痛に意識がいき、君蔵は声を抑えることができない。「感じてんな」と八角が嘲笑う。 「あ、ひっ……ぅんッ」  今まで我慢できていたものが、後ろを犯されたことで困難となり、甘ったるい声が濡れた唇から溢れる。八角を楽しませたくないのに、自分の甘ったるい声なんか聞きたくないのに、10年かけて作り替えられた身体は、与えられる刺激に簡単に反応してしまう。 「さっきの、なんだ」 「んひっ」  乳首をギュッと摘み、八角は目つきを鋭くして言った。 「お前、新堂に賭けてねぇだろ。なんだアレ。新堂を庇ったのか? 殴ったのはパフォーマンスか? まさか、ドクターストップかけるためなんて言わねえよな?」 「新堂……さんっ」  八角は待っていたらしい。君蔵が「感じている」と素直に認め、その先を受け入れることを。  けれど怒りに任せて口を犯し、その日の夜には後ろを犯した。そうして身体を手に入れても、まだ満たされないらしい。結局彼は、君蔵の心が欲しいのだ。でもそれを八角は認めない。だからこちらも無自覚を装って追い詰めた。 「お、れっ……新堂さん……が、す、好きなんですッ」  八角は怒りに目を剥き、じっと止まっていた腰を、激しくゆすった。 「あああッ」 「たった二ヶ月しか知らねぇくせにっ、ふざけたこと言ってんじゃねぇぞっ! テメエは俺のもんなんだよっ! ずっと、これからも、俺だけ見てりゃあいいんだよっ! なにが新堂だっ! 俺はあいつの実家焼き払うこともっ、一家心中させることもできんだぞっ!」 「しんどうっ……さんッ」 「おら飲めっ! 俺のザーメン、全部お前ん中注ぎ込んでやるっ! おらっ! ははっ、ちんこ勃ってんじゃねぇか! 気取ってんじゃねぇぞッ!」  暴力的なピストンに意識が朦朧とした。中に、八角の欲が注ぎ込まれていく。気の狂いそうな不快感に、君蔵はゆるゆると首を振った。けれど腹の奥底、仄かな満足感が湧いてきた。八角は体にしか触れられない。愚かな小僧。お前はこの体を自由にできても、本当に欲しいものは決して手に入れられないのだ。それを思い知らせてやる。 「新堂……さん」  八角が胸に迫ってきて、乳首に思いっきり噛み付いた。 「うっ」  いつもと様子が違う。痛いッ……噛みちぎられるッ 「いっ、痛いッ……痛いッ! や、やめてっ、くださッ……」  背筋がゾワゾワとした。足には力が入らないし、両腕は八角の腕にがっちりホールドされている。ビリッと鋭い痛みがし、血の気が引いた。八角が口周りを赤くし、ニッと笑った。歯に、赤い乳首を咥えながら。 「あ……ああ」  狼狽する君蔵の唇を奪い、ソレを押し込んでくる。あまりのおぞましさに涙が溢れた。舌先に乗せられ、その上で転がされる。頭を振って抵抗するが、八角は君蔵の顎を掴んでそれも封じた。八角の熱い舌と、体の一部だったものが、口の中を蠢く。  ソレが欠けた胸はヒリヒリと痛み、細い血の線を肌に落とした。  何に興奮したのか、中で萎えていた八角の男根が、再び猛々しく質量を持ち始めた。 「ん……」  喉を、異物が通過した。口の中に血の匂いを残し、八角の唇が離れる。 「俺の10年、侮辱しやがって」  八角はそう言って、突起のない、平らなソコに顔を埋め、チウチウと血を吸い出した。  感じない。痺れるような快感も、くすぐったさも、もうソコは何も感じない。このまま心も、何も感じなくなればいいのに。傷つくものが体だけならいいのに。  君蔵は咽び泣いた。八角が腰を振ってきて、濡れた声が溢れた。自分を責め苛む男にできる唯一の抵抗として、君蔵は苦痛に喘ぎながら、新堂の名を口にした。
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