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北の大地を半分進んで丘陵地帯を訪れる。
「これからどうする?」
海晴の告白から全く話がなかったが、群雨が綺麗な風景を眺めながら話す。
「こんな天気が続いたらこの風景もなくなるだろうな。それこそ日本の殆どが困ってしまうことにもなる。だけど、それでも良いかな」
海晴の仕事でもあることだから、ある意味で脅しにも聞こえる。しかし、言葉はそうではなかった。
だから海晴も不思議な顔をして群雨のことを眺める。
「俺たちが仕事を進めなかったり、異常なことを続けたら、この仕事をこれから続けられなくなるのかもしれない。でもそうなったらカイセイと会うことは叶うのかもしれない。それも悪くないって思っちゃったんだ」
あんまりなことを群雨が話してる。こんなのは群雨のキャラではない。本音で語っているのなら。
「そんなのムラサメが願ってるとは思えないよー。どうせ仕事に真面目なんだから。冗談はこれまで」
海晴の元に笑顔が戻る。
君が言うそんなのは冗談だってわかってる。あたしでもそれなりに考えるんだ。それにそんなことになるのをあたしだって望んでない。あくまで平和な天気をこれから未来永劫続けるんだから。
「俺たちはこれまで通りに戻れる?」
ちょっと恐い質問。海晴が断ったらどうなるんだろう。僕にはわからなかった。
「やだね。元になんて戻んねーヨ。だってあたしはムラサメが好きなんだから。年に一か月の恋人でも良いよ」
晴々としている海晴の笑顔。そして群雨も笑っていた。
「そうだね。織姫と彦星なんて年に一度しか会えないのに夫婦なんだ。俺たちのほうがまだましなのかもね」
「夫婦とは望み深いね。でも叶うかもよ」
ふと一例に挙げただけの話だったのに楽しそうに海晴が笑うもんだから、群雨が顔を赤くしていた。
すると赤くなっている頬を両手で挟むように海晴が叩く。
「照れてる場合じゃないよ。この天気もどうにかしないと」
それから二人は話し合い天気をまともに戻した。災害級の晴れも雨もない。今年も二人の季節は穏やかだった。
「じゃあ、また来年な」
月の終わり。それは二人の別れになっていた。
「違うでしょ?」
膨れてる海晴が居て、群雨はちょっと考え直す。
「これからもよろしく」
別れての綴りなんて言わないでまた会えないそんな時を過ごすけれども寂しさなんて無い。
おわり
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