天の恋を晴れ雨に

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 次の日から島には雨が訪れた。 「さーて。次はどこに向かおうか!」 「本来なら次の南の土地に進む。だけどちょっとくらい違う進み方でも良いだろう」  この群雨の言葉に海晴は飛び上がって喜んだ。どちらかと言うと群雨は真面目で面白くない。そして海晴は楽しいことが好きだった。 「じゃあ、夢の国で遊ぼう!」  完全に海晴は自分の望みだけを語る。 「カイセイ。それは飛躍しすぎ」  こんな時は群雨に注意をされて「つまんないよー」と口を尖らせた。  二人が次に訪れたのは四つの県名を皆が覚えないところの南端の岬。良く台風の通り道になるところ。 「この辺から北上しても良いかもな」 「ザ、田舎町! 魚料理とか美味しそう!」  テーマパークを望んだ海晴なので落ち込むかと思えばそうでもない。普通に楽しんでいた。 「鰹にハマチに鯛。これはとーってもおいしー」  お刺身の並んでいるテーブルで海晴がはしゃいでいる。二人の道中食べ歩きは海晴が望んでいる。ときに群雨は「これでなんで太らないんだ」と思うがその分海晴は無駄にカロリーを燃焼させているとも考える。 「この辺は漁師町のほうが多いのかな。そして先月の天気は」  無駄なくらいに料理を楽しんでいる海晴の横で群雨はスマホまで使って先月のこの地方のことを調べていた。 「ちょっとー。ムラサメー。仕事も良いけど折角なんだから旅を楽しまないと」  横から海晴が群雨の肩をつかんでぐわんぐわんと揺すっている。それでも群雨は無視だ。  また二人が街や海岸に里を訪ねる。もちろん美味しいものはついて回る。海晴の手には練り物を揚げたものが抓まれていた。 「今年はちりめんが豊漁でよかったな。沖で雨が降ってくれたから湧くんよ」  話しかけたとある漁師の言葉。そして山里に向かうと。 「冬の雪も多かったけん田植えの水も心配ないし、多少の空梅雨のほうが良いかもな」  米農家の人でもこんな風に語る。雨を望んでない人だっている。 「じゃあ、この辺は雨は少なめ。あたしの役目かな?」 「そうだな。カイセイの元気な青空も良い」  笑いながらの群雨の言葉。時々君はこんな風に言う。なんだかちょっとあたしは晴々として嬉しくなっちゃうよ。海晴がにこやかに笑ってた。 「んじゃー。次の地方は!」  また海晴は楽しそうに待っていた。基本的に食べ歩きの旅になっている。仕事を無しにする時間もある。そんな時に群雨はもうちょっと進んで歴史観光地も歩きたかったのだが。  西日本で一番の都会で海晴はくいだおれていた。これは度々あること。 「ムラサメー。粉モンにはビールだよ! 呑まないのー?」  見た目は若くとも咎められる歳ではない。海晴は酔っ払って群雨に絡んでいる。そして群雨はアルコール類を摂ってない。 「僕は弱いからね。間違って災害でも起こしたら危ないから」 「そんなの、あたしがどうにかするって!」  楽天家な海晴は次の日にはきっちりと頭痛に悩まされながらも、群雨の調査にはちゃんと同行していた。 「この辺りは例年通りで構わないね。って言うか。カイセイ、聞いてる?」 「うん。アタマイタイ。けど、聞こえてるよ。ちゃんと仕事も進めないとだから」  一応は頑張っている海晴なので、その時に群雨はクスッと笑っていた。この子はとても面白い。普段は面倒そうにしているのに、仕事には付き合う。そして人を足蹴にするのに、こんなにしおらしい時も有るんだ。僕の知っている素敵なところだ。  笑われてしまった海晴は気が良くなくて群雨に鉄拳制裁をお見舞いしようと思う。でも、今の自分の状況が許さない。痛くて。 「次はどうする? 内陸のほうも進みたいんだけど」 「なら、日本一の山をお札の場所から眺めよう! イテテテ。こんなところは群雨が好きでしょ?」  痛がりながら気遣う海晴を群雨は驚いた丸い瞳で眺めてた。 「まるで優しい女の子だ」 「あたしはいつだって優しい女の子だい!」  ちょっとした間違い発言に海晴が痛みを忘れたみたいに群雨にキックを繰り出してた。  二人が訪れたのは湖畔の向こうに雄大な山が眺められる街。食べ物が楽しみな海晴の選択ではないみたい。 「このお饅頭美味しいよ」  まあしかし食べ物を忘れる海晴ではなかった。なので群雨も不思議ばかりではないと納得している。 「特にこの辺りはどちらにも困ってる風では無いよな」  辺り聞いて回ったりして様子伺うとどうと言うこともないので話し合う。 「じゃあ、この季節らしくちょっと雨多めで良い?」  海晴の言葉に群雨も全く文句はなくて「同意」と言いこの地方の意向は定まる。 「これからは、みちのく二人旅かな?」 「まあ、時にはカイセイの願いも叶えようか」  順調に進めれば北に進めるのが本来。しかし、群雨はこれまでと違った目論見。
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