天の恋を晴れ雨に

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 旅をまた翌日から再開させるが海晴の言葉数は無くなる。  群雨が土地土地で話を聞いて回って、話し合おうとするが海晴は全く聞かない。これでは仕事にならない。  二人はお互いに話し合って天気を左右させる。二人揃って晴や雨にするので偏ってしまう。お互いが違う天気を願えばそれは、まともな天気にはならない。夏に雪が降ることもあり得るんだ。  梅雨時期なのに晴れが続く。時々なら構わない。しかし雲一つない空が続くと問題も起こり始める。 「全国の晴天続きで先月から雨の少なかった地域では渇水状況になっています」  スマホでテレビの天気情報を群雨が真剣に見ている。これも仕事の情報収集にもなる。 「カイセイ。ちゃんと仕事しないと」  今は気を使って地元料理の店で海晴の好物を並べている。それでも海晴は一言も喋らない。  それからの道のりもずっと海晴は群雨を無視ってた。 「好い加減にしないと、災害になってしまう。なんでそんなに怒ってるんだ」  もう二人の旅路は本州の北の端までたどり着いて、あの花火の夜からかなりの日々が過ぎている。報道では水問題が重要化していた。 「わかってないの? どうして、あたしが怒ってるのか?」  おそらく僕が告白したのが問題なんだろう。だけどそんなに悪いことだったんだろうか。いつかはこの想いを告げたいと思ってた。ただそれを叶えただけなのに。恋が叶うのなんて願ってない。ただ海晴には伝えたかっただけだったのに。 「別に俺のことをカイセイが好きじゃなくても良い。だけど仕事は」  その時点で海晴が言葉を遮って、群雨の襟元を掴んだ。 「あたしもムラサメのことが好き。告白してくれて嬉しかったんだよ」  また海晴の瞳には涙がある。群雨でもあまり見たことがない涙が。 「じゃあ、さ」 「付き合えないし、結婚なんて出来ない。想い合うのは良くないんだよ」  海晴の想いまでわかってしまったら、僕は喜んだ。願ってなくてもそれは嬉しくない筈もないんだから。  それでも海晴はまた群雨の言葉を遮っている。普段の楽しく華やかな笑顔はない。 「あたしらは年に一か月しか会えないんだよ。そんなの寂しすぎるよ。あたしはそんなの望まない」  これは群雨もわかっていたこと。だから反論は出来なかった。  天気はそれからも異常気象としての晴れが続いた。段々深刻化する状況。  今の二人にはどうすることも出来ないのが弱い。
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