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☆03. interlude R
やっと、恋人同士、想いを確かめ合える……ここまで来たんだ。
ぎゅっと課長のシャツの裾を掴む。
課長のなまあたたかい舌が口内に入り込んでくる。そのあまったるさに、目眩がする。
くちゅりと。粘膜と粘膜を擦り合わせ、……キスは愛撫なんだと、このときわたしは悟った。
冬を悟る男、冬悟のキスは甘すぎる。
舌と舌を絡ませ。不器用ながらも応える。
わたしのなかで課長が、大きくなっていく。
歯列を舐められ、鍵盤のように辿られたときに。視界が真っ赤に染まった。ずくんと、自分のなかの隠し持つ扉が開かれた感覚。
唇を離すと唾液が……辿る。課長までの痕跡を。
「夏映。……感じてる?」
わたしの髪をやさしく撫でる課長を見ているうちに、なんだか、涙が出そうになった。
傷を抱えた者同士。ここまで辿り着くのは至難の道のりだった。
やっと。すべてを晒せる。思いを確かめ合える……ここまで来たのだ。
既にぐったりと力を失ったわたしは、課長に、頭を撫でられるだけでそれだけで、からだに電気が走る感覚を味わう。触れられたところが――熱い。
「おかしく……なっちゃうよ……」喘ぐように言った。でも……。
「もっと、わたしを味わって。あなたしか見えないの。お願い……」
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