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「藍原さん。……篠田課長のこと、苦手だったりする?」
周囲と壁を作り。雑談には一切加わらない、部署のメンバーとも馴染もうとしないわたしが、一人、フリースペースで耳を殴るように爆音で音楽を聴いていると話しかけてきた。……これまた、わたしとは違う人種のかたで。WMでふたりのお子さんがいるという。
分かるはずが……ないんだ。
こんな恵まれたひとになんか。
「別に。苦手ではないです。ただ、価値観が、ちょっと、違うな、って思っただけで……他意はありません」
「そっか」と栗沢さんはわたしの隣の席を見て、「座っていい?」と聞いてくる。
あーあ。
栗沢さんには、小学生の男の子がふたりいて。働くお母さんでお忙しそうで、毎日16時にはあがっていく。時短勤務をしている。
これから自慢話とかマウントが始まるのかな。満たされた主婦の愚痴とか。
そもそもうちの部署――人事部企画課とは、なんでもかんでも他の部署の仕事も引き受ける部署で、暇人の巣窟、という蔑称があるくらいだ。
うちの会社は残業をするひとが多い。わたしも前の部署では毎日残業まみれだった。
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