☆02. 理解不能

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 だから。かえって、残業ゼロを貫く、人事部企画課を、白い目で見ていた節もある。みんな、戦っているのにあいつらだけ。  因みにわたしが企画課に異動となったのは結局からだを壊したのが原因なわけで。気持ちはあるのだが、からだがついていけなくなった。三十路を前にすると無理が効かなくなる。若い頃みたいに徹夜も出来ないし。  だから。  平和な世界でのうのうと時短勤務を満喫する栗沢さんが、敵に見えないでもなかった。彼女はわたしの視線を受け止めると眉を歪めて笑い、「にしてもすごい音量だね。耳、痛くなんない?」  ワイヤレスイヤホンを外した。ひとが。こんな、……糞みたいな世界でそれでも、勤労の義務、納税の義務を全うしているというのに。休憩くらい好きにさせてくれないか?  栗沢さんは、「英語の曲だよね? なんて曲?」  やや投げやりな気持ちで、「リンキン・パークの、『One step closer』です」
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