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幼稚園から帰ってきても僕はととと一緒。スマホを眺めているお父さんの横でととの頭を撫でる。
「なぁ裕太。いつまでととを置いておくんだ? 大分汚れてきたろ?」
「ととはずっと一緒だから」
お母さんがその話を聞きつけて割り込んでくる。
「あんまり汚いの持ってたら印象よろしくないよ?」
だよなぁとお父さんが呟いた。
僕は二人を無視して、ととの頭を撫でる。何にも分かってないのお父さんとお母さんじゃないか。
ご飯を食べてお風呂に入って歯を磨いて、電気を消して三人横になる。僕は決めた。家出するって。ととだけいればいい。
お父さんがいびきを書き出し、お母さんの寝息が聞こえてから僕はととを抱いてそっと寝室を出る。パジャマのまま、玄関のチェーンを開けて外に出る。
はじめて一人で外に出る真夜中。ととをぎゅっと抱いて僕は歩き出す。あてはない。お金はないから、頼れる人を探さないと。
人の姿はまるでなかった。空にはお星さまが輝いているけど、幽霊でも出るんじゃないかと気が気じゃなかった。
どのくらい歩いたろう。結構歩いたはずなのに、まだ僕の家が見える。これじゃすぐ見つかっちゃう。
どこか道を曲がろうと進むと猫がいた。
「あ、可愛い!」
猫を追いかけたら猫はあっさり捕まった。ととを置いて抱き上げてみる。
猫は不思議そうに僕の顔を見つめる。
「でも、ととの勝ちだな」
猫を離したら、猫はととを咥えて走り去って行く。
「とと!」
走って追いかけたけど、猫はどこかに消えてしまった。
「とと……」
涙が溢れてきた。
「ふぇぇぇ」
声をあげて泣く。その時、お父さんの声が聞こえてきた。
「裕太! どこだ!?」
逃げようと立ち上がったら転んだ。膝も擦りむいた。また声をあげる。
瞬間、抱き上げられた。
「裕太! どうしてこんなことに!?」
お父さんの声が怒っている。お母さんの僕を呼ぶ声も聞こえる。
「ととがいなくなっちゃった……」
お父さんが抱き上げている僕の頭に手を置いた。
「ちゃんとととを見つけてやるからな」
お母さんも追いついて僕を抱きしめたあとで、ととの大捜索が始まる。
「どんな猫だった?」
「なんか白い猫だった。すぐに抱かせてくれたよ」
うーんとお父さんが頭を抱えたがお母さんには分かったぽい。
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