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ととといっしょ
うさぎのぬいぐるみのとと。その子は僕が生まれた日に僕のもとにやってきた。気の早いお父さんからの最初のプレゼント。ととって名付けたのはお母さんらしい。僕が喋れるようになったとき、呼びやすい名前がいい名付けたみたい。
来年は小学生なのに、ずっとととと寝てていいのかな? とは思うけど、僕はととを手放せない。どこに行くにも一緒に行くもの。
「裕太、ご飯早く食べなきゃ。もう幼稚園の時間だよ?」
寝ぼけ眼でトーストをかじる。焦っているお母さんを横にお父さんはせっせと動く。
「それじゃ行ってくるね」
「もう! たまにはあなたも裕太を送って行ってよ! 私もパートがあるんだから!」
お母さんは、いつも怒りっぱ。お父さんはいつも呆れ顔。それでも文句は言わないけど、表情がうるさいって物語ってる。何にも答えずお父さんは外に出た。
「もう! 裕太も早く!」
もそもそとトーストをかじって野菜ジュースで流し込む。ごちそうさまと呟いて、ととを抱いた。
「お母さん行こう」
「本当にととが好きだねぇ」
呆れ顔のお母さん。僕はととが一緒にいてくれるなら何だって頑張れる気がする。
ととを左手に抱いて右手をお母さんと繋いで歩く。車が通り過ぎる度にお母さんはため息をつく。
「スピード出し過ぎでしょ!」
お母さんは何に対しても怒る。僕のことが心配だから色んなことに怒っているって言ってるけど、僕はちょっと気分が悪い。身近な人が怒りっぱだと心が疲れてしまうもの。
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