背中に結ぶ赤い襷

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「試合見に来てくれてありがとう!」 その日の夜に千景から届いたメッセージには、襷の写真が添えてあった。 今日、目に焼き付いた赤い襷。 しかしそれは近くで撮られた写真では色褪せていた。 自分の襷を引き出しから取り出して見比べる。 同じように色褪せた襷。 康二も赤い襷だった。 体が疼いた。 今すぐ走り出したい衝動に駆られたのはいつぶりだろうか。 康二の駅伝が終わっても、千景の試合が終わっても続いていく何かがある。 ずっと繋いできたのは、自分の気持ちだったのかもしれない。 似てるのかもな、たしかに。 剣道と陸上も、襷と自分も。 大切なものは、無理に離さなくていい。 握りしめていたらいいか。これからも。 康二は小さく呟いてメッセージを返した。
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