背中に結ぶ赤い襷

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大将戦は、勝ち上がるほど白熱する。 千景たちは、県大会のベスト8争いに突入していた。 ぎりぎりと軋む竹刀の弦。面と面を突き合わせて相手と文字通り間合いを探り合う鍔迫り合い。 ぐっ、と下に力を加えられ、その反動で緩んだ手元を払い除けて真正面から引き面を打ち込まれる。 「イヤァーーーーッ、メァーーーーンッ」 自分が釘になって地面に埋まりそうになるような衝撃が脳天に走る。 この感覚は確実に一本取られている。 千景の竹刀はぶつかり合いで場外まで飛んでいたこともあり、一旦協議に入ったが相手の一撃が正式に一本と認められた。 審判が白旗、相手の襷の色の旗を上げる。 それを千景が目で追うと、すぱっと空気を裂くようにすぐに旗は振り下ろされた。 竹刀を拾い、開始線に立ち戻る。 相手は千景の竹刀を飛ばしたことを会釈で詫び、千景もそれに会釈で応える。 互いに蹲踞の姿勢を取り、試合再開。 剣道の試合は約3分。残り時間は1分だった。
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