背中に結ぶ赤い襷

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剣先で相手を牽制する。 カチッカチッと竹が当たる。 相手の息遣い、足の運び。 相手は一本取っている。 ここからは積極的に打って出ず、逃げ切るつもりだろう。 その証拠に脇は閉じて無意識に胴を守っている。 元々胴は頭を狙う面や、手首を狙う小手に比べて一本が決まりにくい。 千景が狙いを定めたのは小手だった。 相手の方が背が高いため面は外すかもしれない。 しかし小手ならば間合いに飛び込めば仕留められる。 こちらが面を打たれて負ける可能性もあるが、もう後がなかった。 剣先をくいっくいっと動かして相手を誘う。 すす、と無意識にであろう間合いを詰めてきた瞬間に千景は動いた。
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