戻りの四つ辻

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戻りの四つ辻

「最近、不審者が児童を狙ったニュースなどが増えてます。皆さん。登下校の時には十分に注意しましょう」  春。小学六年生に進級した明乃のクラスの帰りの会で担任の先生がそう言った。去年のこの時期もこんな話をされたなと、明乃はなんとなく覚えていた。春にはそういう人が多いのだろうか。  帰りの会が終わると、明乃は教室を出る。男子達は走りながら放課後の予定を話している。遠くの方で「廊下を走るな」と先生の声がする。  明乃はランドセルを手に取ると、横にひっかけてある防犯ブザーが目に留まる。生徒の安全の為ということえ学校から配られたものだ。黄色を主体とした色で、赤いボタンを押すか、お尻についているピンを引き抜くと、ブザーが鳴る。たまにあるのが、何かの拍子にピンが抜けてしまい、けたたましいブザーが辺りに響いてしまう。明乃はさっきの先生の話が一瞬頭を駆け巡ったが、学校を出るころにはスッポリと抜けていた。  家に帰り、宿題に取りかかる。面倒ではあるが、後回しにするほうがよっぽど面倒だと明乃は知っている。新学期が始まったばかりなので、量は少ない。30分もかからなかった。  一階から、お母さんが夕飯が出来たと呼ぶ声がし、明乃はリビングへ向かった。今日はカレーだ。側にはサラダが添えられており、レタスとキュウリの上には真っ赤なトマトが目立つ。お父さんは今日遅いらしく、お母さんと二人での晩御飯だ。  カレーを一口、スプーンで口に運ぶ。ほんの少しピリリと辛い。明乃はもっと辛口が好みなのだが、明乃以外は辛いのが苦手なので、この辛さで勘弁してあげている。
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