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いつも呼び出されるのは深夜
狭いワンルームの部屋は暗い。
足の踏み場がないほど、メイク道具やヘアアイロン、服、美顔器で床が埋め尽くされている。
部屋の奥にはベッドがあり、ひとりの若い女性が寝そべってスマホの画面を見つめていた。その部屋の中で明るいのはスマホの画面だけだった。
ずるずるっ、と彼女はカップラーメンをすする。
小林ひめか、21歳の女子大生。
襲ってくる眠気を、食べること、スマホを見ることで必死におさえていた。
―――早見くん、今日は先輩との飲み会のはずだから、絶対に連絡が来る。
ひめかがそう思ったとたん、ピコンとスマホが鳴ってLINEのメッセージが届いた。
“いつものホテルの202号室”
シンプルなそのメッセージを見て、ひめかはすぐに起き上がり、目を輝かせた。
眠気はいっきに遠のいた。
頬が紅潮して、急いで部屋の電気をつける。
鏡を見ながらファンデーションを顔に塗り、アイシャドー、マスカラ、アイライナー、リップとメイクで肌の荒れやむくみをごまかしていく。
肩までの髪をアイロンでゆるく巻き、スタイリング剤をふきかけたあと、ノースリーブで胸の部分が開いたミニスカートのワンピースを着た。
コンタクトレンズを入れてから、スマホを再び手にとる。
画面に表示された配車アプリのアイコンを押した指には、ピンクのネイルが塗られていた。
「さてと、急がないと」
タクシーの窓に、先ほどと同一人物とは思えないキラキラとした輝きを見せるひめかが映る。
ひめかは「ピーチアイホテルに」と運転手に言ってタクシーに乗り込んだ。
―――カキタレ。
芸人のセックスフレンドのことをそう呼ぶ。
しかし、ひめかはその言葉を知らない。
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