『カッコウ』

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 それから、僕は踏ん張るのをやめた。  両親にも反抗しなくなったが、学校でなんとか遅れを取り戻そうと必死になることもしなくなった。  だが、家からは出ないとならない。中学卒業後はすぐ、別の街に移る手筈を整えた。  そうして十七歳の夜、中古車に飛び乗って生まれた街を出て、二度と帰らなかった。  それからいろいろあって、今のアパートに流れ着いたんだ。  当初は悪い連中と付き合うこともあって、酷いもんだったが、本当のところはあまりそういうのも性に合っていなかったらしい。ここに来た時には、どこにも居場所がない、クズみたいな仕事で日銭だけ稼いでいる一匹狼だった。  だけど、隣室の君と知り合う機会を得た。  君はしがない勤め人で、生まれも育ちもぱっとしないし、面白くもない人生を送っていると言っていたが、僕にとってはそんな普通は望めない幸せだった。  だけど、君は僕のことを社会のクズとしては扱わず、ちゃんと人間として扱ってくれた。  だから、君には感謝してもしきれない。  そしてだからこそ、君には僕の計画を話しておかなければならない。  きっかけは先月、君とコインランドリーで落ち合って、備え付けのテレビを横目に見ながら世間話をしていたときのことだ。  きっと君も覚えていることだろう。だって、あんなことがあったのだから。
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