『カッコウ』

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 だから、これは運命なんだと思う。  全てを知るきっかけを作ったのが君だった、僕にとって唯一、どうでも良くない人と言える君だったことも。  僕は、アンドリュー・ワイルド博士の会社と、自宅の住所を調べ上げた。それから出勤時間、それから通勤経路も。  僕一人では、それが精一杯だろう。  君は、カッコウという鳥を知っているかい?  自分では子育てせず、別の種類の鳥の巣に卵を産み落としていく。  カッコウの雛はいち早く生まれると、他の卵を全て、巣から落としてしまう。  カッコウを保護しろ。  カッコウの生態を守れ。  カッコウに人間の倫理観を押しつけるな。  そんなことが言えるのは、カッコウに巣から落とされたことがない者だけだ。  巣から落とされた卵として、僕は。  カッコウの親玉を、地上から消し去らなければならない。
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