第8話

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第8話

 隣の席の徳大寺さんは、少し変わっている。  僕が考えないようなことを、いつも考えている。だから話していると、とても勉強になった。  最近は、部活が終わったら僕が図書室へ迎えに行くことにしている。徳大寺さんは今日も、いつもの窓際の席で調べ物をしていた。 「今日は何を調べていたの?」 「私ね、寝入る時にいつも右向きになるの。そうしないと落ち着かなくて。それで、その向きで寝ることで、何かメリットがあるのかなと思って調べていたの」 「そうなんだ。何か分かった?」 「右側を下にして眠る場合、心臓にかかる負担を軽くすることができるみたいよ。圧迫されないものね。それに身体の右側に消化器の出口があるから、消化器系の働きを良くする効果も期待できるって」 「そっか。僕は逆に左向きが落ち着くんだよね」 「……左向きの場合、身体の左側にリンパが集中しているから、老廃物や体内の毒素の排出を促すことが期待できるって書いてあったわ。そ、それと……」  突然、徳大寺さんが言い淀んだ。 「わ、私と一緒に寝たら向かい合え……」 「ふ……ふぇへっくち!!!」  僕は鼻がむずむずして、くしゃみをしてしまった。 「……ごめん、もう一回いい?」 「な、なんでもないの。か、帰る支度をしないとね」  そう言って、徳大寺さんはパタパタと本を片付けに行ってしまった。  やっぱり、隣の席の徳大寺さんは、少し変わっている。  なぜか、徳大寺さんは耳まで真っ赤だった。
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