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最新式のAI搭載のアンドロイドとはいえ、初対面の相手に家のことを任せるのは些か不安だったものの、手配やら契約の関係で受け取れるのが出張当日の朝しかなかったので仕方ない。
テクノロ爺は自動で充電するとも言っていたし、お手伝いさんと違って二十四時間居て貰えるのもいい。見た目は人間そのものだ、来客にも対応出来るだろうし、キイナを一人留守番させるより余程安心だ。
念のため定時連絡をお願いすると、数時間毎に終わらせた業務についてのメールが届いた。
添付された写真に写るのは、干された大量の洗濯物、綺麗に片付いたリビング、美味しそうな料理。それらは久しぶりに見る光景だった。
「……すごいな、本当に」
家のことを何も考えなくて済む。キイナのことも気にしなくていい。それだけで、肩の荷が下りた気がした。
カナデが亡くなってから、こんな時間は初めてだった。
*******
そして三日後。出張自体は昼には終わったものの、久しぶりの自由な時間が惜しくなり映画に買い物にと満喫し夜遅く帰宅すると、テクノロ爺は頼んでおいた掃除も洗濯も、キイナの寝かしつけまで完璧にこなしてくれていた。
「すごい……リビングの床が見える」
「お帰りなさいませ、遅くまでお疲れ様でございました。夕食はお済みですか?」
いつもなら、キイナは帰るといつも泣き喚いていたり泣き疲れて寝てしまっていた。だからこんな風に誰かに出迎えられるのは久しぶりで、何と無く照れくさく感じてしまう。
「あ……ただいま。いえ、でもスーパーで値引きのお惣菜を……」
「さようでございましたか。必要かどうかお伺いするのを失念していたので、念のためダイゴ様のお食事も用意はしておいたのですが……それでしたら、こちらは破棄するか、冷凍して後日お召し上がりになりますか?」
「えっ、作ってくれたなら今いただきます!」
「かしこまりました。では温めますので、少々お待ち下さい」
僕はお惣菜の方を冷蔵庫に突っ込み、スーツを脱ぎながらテクノロ爺の作った料理がテーブルに並ぶのを待つ。やがて温められた料理の美味しい匂いがして、腹が鳴った。
「いただきます……」
日々に追われ、食事はエネルギー補給のための手段で、いつしか流れ作業と化していた。
作る時間が惜しく洗い物をするのも手間で、自炊すら諦めていた。キイナも菓子パンやカップ麺を文句も言わず食べていたから、それでいいと思っていた。
「……うまい」
それなのに、テクノロ爺の作った食事を一口含むと、かつて妻が作ってくれた優しい味を思い出し、じんわりと身体の奥底から温まる心地がした。
僕は夢中で箸を進め、あっという間に完食する。
「はー……ご馳走さまです」
「お粗末様でした。片付けも致しますので、そのままで結構ですよ」
「ありがとうございます……。僕、こうして誰かの手料理を食べるなんて、久しぶりで……」
「おや、さようでございましたか、それがこんな老いぼれの作るもので申し訳ない」
「いえ! すごく、美味しかったです……」
「お口に合ったようで良かった」
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