キュンに御用心👕

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キュンに御用心👕

「こんにちは。自販機の集金に来ました」  なんだ、業者か。でも作業服を着てないのは違和感だ。 「あら? いつもの人じゃないのね? いつもなら電話してから来るのに⋯⋯」  おばあちゃんの言葉で、違和感が強くなる。この男、業者じゃないんじゃないか? 「いつものスタッフは病欠でして。今日は代理です。電話は失念してました、スンマセン」  誠意を持たない謝罪⋯⋯。おばあちゃんも何やら警戒している。もしかして自販機の売上金を盗みに来た? ここにおばあちゃんしかいないと思って? だとしたら狙われていたのか。間違いならばそれで良いが、私は勢いよく立ち上がった。 「身分証を見せてください!」  若い男はニヤニヤしていて、 「ここにありますよ」  と胸につけた名札のようなものを指差した。 「近くに来なきゃ見れませんよ」  言いながら私は警戒を怠らず、一歩一歩近づく。名札のようなものを見た。「鈴木」と書かれているだけだった。 「ちょっと、これって!」  言いかけたとき、どんと胸を突き押された。男は車に乗り込もうとする。 ───刹那。  そこにタイヤを鳴らした高そうな車が滑り込んできた。  仲間か!と思ったら、その車は仮称・鈴木の車に正面衝突して行く手を塞いだではないか。  そして飛び出してきたのは白いTシャツの若い男性。彼は仮称・鈴木の首根っこを掴み、柔道の要領で駐車場に投げ倒す。  そして彼は私に言った。 「警察呼んで」  慌てて私は110番した。仮称・鈴木はすぐさま立ち上がって車に乗り込む。だが、何度試みてもエンジンがかからず、諦めたそいつは走って逃げて行った。  白いTシャツさんは、私からスマホを取り上げると、警察に事情を話した。仮称・鈴木の特徴や、投げ倒した際に破れた黒いTシャツの背中の穴の形状までも。  よく見てるなあと感心した。  おまけに説明が上手い。  心のどこかが、キュンとした。  
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