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マザコンですか?
白いTシャツさんは話し終えてスマホを私に渡し、
「日本の警察なら、すぐに捕まえるさ」
と言った。
そして、店内からおろおろ見ているおばあちゃんにも声をかける。
「大丈夫だった?」
おばあちゃんは安堵したように頷く。
「ありがとう、コウちゃん」
ん?
コウちゃん?
確かクライアントの名前は⋯⋯沢渡浩次!
「えっと、あの、もしかして沢渡さん⋯⋯ですか?」
コウさんは微笑んで応える。
「松本さんだね。ありがとう、母を守ってくれて。そこのばあちゃん、俺の母さん」
「えーー!?」
事情を聞くと、沢渡さんの両親はすごく昔に離婚して、沢渡さんは父親とともに下山したらしい。
でも父親に親権を持たれたことが不服だった沢渡さんは、ホストをやってお金を稼ぎ、ログハウスを建てて山に戻ってきた。
いつでも母を守れるように。
一人で暮らす母の話し相手になれるように。
「⋯⋯マザコンですか?」
茶化して言うと、
「ある意味そうかもね。母の売る駄菓子が好きだから。山で食べる駄菓子は、下で食べる駄菓子より何倍も美味いんだよ」
と言って笑った。
その笑顔がとてもキレイで、私は自分の中の気持ちが錯覚じゃないと思ったのだった。
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