一.

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一.

「南米の密林地帯で、生態系の正常化事業に参加したいんだけど」 十三歳の誕生日、家族に発表した。 『ミチルはそんな大きな事を考えていたのか、すごいな、成長したな』 これは父さん。 昔からたいがい何でも()めてくれる。 『やめなさい、何かあったらどうするの、そんな危険な所』 これは母さん。 まぁ、そう言うでしょうね。 『この時代にまだ通信インフラ最悪の地域だろ、やめとけよ、ジャンク信号で俺たちまで劣化しかねないだろ』 兄さんは自分の趣味以外には批判的で、特に面倒事が起こりそうな話だと機嫌を悪くする。 『当該地域においてミチルが三年間生活をした場合、無事に帰国できる確率は86%、軽微な傷病・事件事故も勘案すれば8%となります。 ただし掲題について、ミチルが関わることで生じる社会的生産性や個人的自己実現性を考慮すると、私は58対42で実行を推奨します』 妹はいつも冷静で客観的。 「つまり、多数決では半々だね、結局いつも通りか。 僕はけっこう本気で行きたいんだけど、どうしようかなぁ」 つぶやくと、再びみんなが僕の頭の中で同様の終わり無き論議を始めた。 AIは膨大な知識と分析力を備えるが、融通はあまり効かない。 生まれた時からずっと彼らと暮らしているので慣れたものではあるのだが、今回のように自分が本気でやろうとしている事、明確な自我を表明すると、堂々巡りの大騒ぎになってしまう。 何をするにも一生こうなのかなと、不安になる時もある。 「いや、一生って事は、無いはずだよな。 みんな、ちょっともう一つ急な提案があるんだけど」 『ん?なんだ?父さんはミチルの意見にはいつだって賛成さ』 『やだ、何か良からぬ事じゃないでしょうね』 『サッカーとアニメチャンネルにもっと回線開いてくれたら何でも構わないぜ』 『いったん聞いてから判断します。 どういった事案でしょうか』
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