優しい観客と最高の音楽

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先輩の指がわたしの目尻を撫でた。 熱い水滴がすくい取られていく。 「聞いたで。あんた、女子たちにいじめられてるんやて? 何でか調べたら、全部やっかみやん。(しゅう)()()られた思とる奴らが亜矢を遠ざけようとしとるだけやん」 仲の良い男子以外に彼を修吾と呼び捨てられる人は少ない。麻美先輩は特別だ。だから彼も、先輩のことを好きになって⋯。 「でも、わたしには、反論できなくて⋯、だって、多勢に無勢じゃ勝てっこない⋯」 「確かに、亜矢に援軍はおらんようやな」 「どんどん孤立して⋯。どこにも逃げ場なんかなくて!」 「まさに包囲網みたいやな」 「だから⋯だから、もう学校辞めるしかないかって⋯そう思ってて!」 「そか。けど、それじゃあんたの人生、永遠の負けが続くで。そもそもあんたは勝っとるのに、わざと負けてどないすんねん」 麻美先輩は瞳に力を込めていた。 まるで譲らない態度に疑問が湧く。 「なんで⋯わたしが勝ってるんですか。こんなに弱いのに、こんなに臆病なのに⋯」 「せやな。でも勝っとる。亜矢はなんにも負けとらん」 「どうしてですか!」 思わず叫んだ。すると先輩は、わたしの頬に優しく触れた。
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