23. 夢のような時間

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ロイドにエスコートされながらダンスホールに赴く間、至るところから視線が突き刺さる。 だけど、不思議なことにロイドが隣にいると心強くて、その視線も気にならなかった。  ……きっとロイドはエドワード殿下が私を一向に顧みないのを見かねて、気を遣って来てくれたのね。連絡係の任務の一環として。 思い返せば、この国に来てからもう7ヶ月以上経つが、その間ロイドはずっと私を気にかけていてくれた。 人質である私のことを見下すこともなく丁寧に接してくれて、色々なことを教えてくれた。 王宮を抜け出していることが露呈してからも、私の要望に耳を傾け黙っていてくれている。 この国でこんなに心穏やかに過ごせているのはロイドのおかげと言っても過言ではないだろう。 今日もずっと上座で座っているだけだろうと思っていたのに、こうしてダンスを踊る機会を与えてくれた。 舞踏会に出席する機会はなかったけど、教養としてダンスを学んでおいて本当に良かった。 「それにしても公の場でダンスなんて初めてだわ」 「私も数年ぶりですよ」 「あら? そうなの? ロイドならいつもたくさん女性から誘われるでしょうに」 「今まで踊りたいと思う女性なんていませんでしたから」 エスコートされながら小声で話していたら、急にロイドからベール越しにじっと見つめられた。 ルビーのような赤い瞳を熱く向けられ、体温が急に上がった感覚がして、心臓の鼓動が早くなる。 脳裏には先日のロイドの言葉が蘇ってきた。 ――「どんなに容姿の整った女にも興味がないのに、顔を知らない人に惹かれるということもありますよ。私の経験談です」 あの時にも感じたドキドキを超える胸の高鳴りが私を襲う。  ……私、一体どうしちゃったの⁉︎ こんなに多くの人の前で初めてダンスをすることに緊張してるのかしら? 感じたことのない動悸に動揺していると、ちょうどダンスホールへ到着した。 ゆっくりとした3拍子の音楽が流れ始めると同時に、流れるような動作でロイドに腰を引き寄せられ、一気に距離が近くなる。 心臓が飛び跳ねるのを自覚しながら、ロイドと向かい合い、ダンスのポーズを取ってステップを踏んだ。
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